トランクルームとスレイベル

乙女ゲーム(+α)の感想など

吉原彼岸花 時雨ルート+全体感想

私が勝手に長引かせていた吉原彼岸花感想も次でラストです。
今回はある意味激震が走った時雨さん。プレイした方にはわかっていただけるかと(笑)
ネタバレ有りなのでOKな方のみ続きからよろしくおねがいします!

 

 

桜華屋時雨 (CVほうでん亭ガツ)

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裏メインの桜華屋楼主。
このゲームは面白い構成をしていて、時雨さんの表ルート(仮称)を含む4つのルートを攻略すると伊勢屋さんが攻略可能になり、伊勢屋さんのEDを見ると時雨さん裏ルート(仮称)が攻略できるようになります。
つまり他3人&時雨さん(表)ルート→伊勢屋さんルート→時雨さん(裏)ルート、と終盤の攻略順が固定になってるんです。

絶対この人胡散臭い!と挑んだ表ルートは、「子供の頃から面倒をみてくれている時雨さまは、私のことなんとも思っていないのかしら」という感じで、年上の男性を異性として意識するようになる甘酸っぱいもので拍子抜けしました。
え、うそ、こんなに怪しいのに…?と狼狽えつつ進んだ伊勢屋さんルートで、彼の所業の一部が明かされ。ほらやっぱり!と思っていたら裏ルートで発覚した全貌に震えが走りました。

端的に言えばほぼすべての元凶です。
主人公を手に入れたくて、邪魔をするものは何もかも排除してきた人です。これすっごくソフトな表現。
の割りにきっちり客は取らせているし、他ルートのバッドEDで執拗に追いかけてくる時も諦める時もあるので、いまいち主人公に何を求めているのかわからなかった時雨さん。
すべて終わってみると、彼自身も自分が何をしたいかわかってなかったのではと思いました。
辛い過去によって、ぐちゃぐちゃに壊れてしまった時雨さん。思考も行動も破綻してしまったために、極めて行き当たりばったりに行動しているように見えます。
『とにかく主人公を傍に置きたいからどういう手段を使っても手に入れる。手に入れた後はとりあえず自分の一番管理しやすい桜華屋に置く。そうなると主人公は遊女見習いとなり、ゆくゆくは客を取らなければならないがそこは深く考えない。彼女の両親が既に死亡している事実を隠しているが、もちろん年季が明けた際にはすぐ露見するその場しのぎの嘘にすぎない』
…と、先を考えてのものではない、その時々の彼の感情のまま動いている印象です。そう考えると作中言動が一貫していないことがむしろしっくりきます。ある意味刹那主義?
その反面年を取って、自分の歪さからも目をそらせなくなってきたのか、疲れ果てて何もかも諦めているような顔も見せます。
その感情が一定を越えると主人公を手放すという選択肢が出てくるのでしょうね。
 
面白いのは表ルートでは後ろ暗い過去を打ち明けず*1、むしろ主人公を己から遠ざけようとすらしているところ。この辺も矛盾しているようで、主人公に求められることで心の一部が満たされてなけなしの良心が芽生えた、という流れなら自然かなと思いました。
たとえ見せかけだけでも「主人公に慕われる立派な楼主様」であろうと努力していたようなので、それも影響しているっぽいですね。
彼が作中でやったことの重さを考えると、素直に萌えるのは難しいプレイヤーさんも多いと思われます。
でもこういう葛藤するキャラにはどうしても肩入れしてしまう…。だめんず萌えとは思いたくない。
支離滅裂な彼なりの行動原理を(勝手に)推しはかってみると、すごく弱くてダメな人間臭い人に見えて、私は時雨さん嫌いになれないです。
彼が好き勝手しすぎたために、私の中で伊勢屋さんが霞んでしまって彼は本当に不憫でした。
 
 

全体感想

しっとりしたエロ、容赦ないバッドEND、ほんのり生々しいキャラクターたち…とR-18という強みを最大限活用しきった良作だと思います。
作風としてはかなり真面目。プレイヤーが戸惑わない程度に、当時の風俗や言葉遣いをさりげなくいれてあって時代物としても優秀でした。
トーリーやキャラクターにプレイ前と後でのギャップはほとんどない、ある意味素直な作品ではあります。
でも濃い。
「売れっ子遊女だけど恋を知らない女の子が、初めて恋をしたことによってその後の運命も変わっていく数月間」を丁寧に丁寧に描いてます。
こう書くと甘酸っぱい(?)あらすじに見えますが、主人公はきっちり遊女やってますからね…。今まで我慢できたことができなくなったり、恋を知ることは必ずしもプラスではない。
 
そんなシリアス路線で遊郭もの設定ですから、まあ内容は推して知るべし。
特にバッドENDの力の入れようと言ったら。バラエティ豊富で、手を抜いてるものが一つもない。
みぞおちのあたりを鈍器で小突かれているような感覚を味わいっぱなしでした…。
主人公も攻略対象も好感を抱きやすい人たち*2なので、余計にクるものがあります。
バッドENDが(本当の意味で)すごい乙女ゲーム3つ挙げろって言われたら多分これがランクインする。メリバというより本来の意味でのバッドENDが多いです。
私が特にうわーと思ったのは、忍さんのお妾さんになったはいいものの段々虚しい関係になっていく例のアレと、恋をした結果仕事ができなくなった主人公が落ちぶれていくENDです。つらい。
けしてそれだけのゲームじゃないんですけどね、でも印象がめちゃくちゃ強い。
そのうち「ほのぼの可愛いシーンも上げて落とすための前フリなんだ…私は知ってる…」と甘いイベントも死んだ目でクリックするようになりました。
 
印象で言ったら時雨さんですよ。
なかなかR-18でもないとお目にかかれない部類の攻略対象です。
色々破綻してるダメ人間。でもそこが妙にリアリティがあって、この人を出そう、ましてや攻略対象にしようと思ったメーカーさんすごい。
別にこういうタイプに限らなくてもいいので、冒険したキャラをもっと攻略してみたいです。
 
ボリュームもそんなにある作品ではないのですが、濃厚な内容によりお腹一杯状態。
「おかわりいるか?」って言われたら「あ、ちょっと消化するから待って」と「いや、もう大丈夫です」で迷うでしょうね。周回プレイに時間あけて挑んだくらいですから。
シナリオがしっかりしてる作品、ストーリーがいいものという意味ではおすすめなんですが、どれだけ鬱要素に耐性があるかで評価も変わってきそうです。
 
 

ここまでお付き合いありがとうございました。
一応次はネタバレなしの総評をあげるつもりです。ただ多分今回の全体感想と大分重複すると思います、ご了承ください。
 

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*1:EDで匂わせてはいますが。

*2:一部外面だけど