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トランクルームとスレイベル

乙女ゲーム(+α)の感想など

【総評】 ニル・アドミラリの天秤

総評(ネタバレなし) ニル・アドミラリの天秤

サブタイトルが端的に作品を表しています 

実は総評・感想はプレイメモを見つつがーっと書きたいことをすべて書いた後、削りに削ってます。

そのため時間がかかる割に、アップする頃には没個性…切ない。

続きからなるべーくネタバレなしの総評になります。

15年で終幕せずに25の年を重ねた大正時代。

傾きかけた家を守るため、少女は名も知らぬ男との結婚を決意した。

だがその矢先、弟が古い本を手にしたまま謎の焼身自殺を図る。

混乱する少女の前に現れたのは【帝国図書情報資産管理局】通称【フクロウ】。

彼等によれば【稀モノ】という、読んだ者に大きな影響を及ぼす本が存在するらしい。

更に少女はその弟の事件が切っ掛けで【アウラ】が視えるようになってしまう。

まるで運命が---彼女をその炎に引きずり込もうとするかのように。 そうして少女は戸惑いながらも鳥籠の外に出ることを選ぶのだった。

嫉妬、憎悪、侮蔑、憐憫---そして愛。 少女を待ち受けていたのは、幾つもの裏切りが妖しくちりばめられた帝都の闇。

その中で翻弄され、揺らぎうつろう彼女が辿り着くのは真実か、それとも---。

公式サイトより

攻略対象は隠しを含めて7人。プレイ時間メモってなかった…

共通ルートは存在しますが個別が長めのちょうどいいバランスでした。また行路モードという章選択画面においては、エンディングのフラグあるなし、スチルの有無まで確認できて大変便利でした。

ライターさん買いです。この方のガーネットクレイドルは大好き、戦場の円舞曲は普通という評価だったので楽しみ半分不安半分だったのですが…。

率直に言うと面白いけどそこまで萌えない、という評価に落ち着きました。作品としては一定以上の水準を保っているとは思います。

 

 

 

サブまで作りこまれた人間関係

これは戦場の円舞曲の時にも思ったのですが、この作品ではモブではなく名前・ビジュアル・性格づけありのサブキャラクターたちが多数登場します。物語に深みが出るというか、こちらの感情移入度に関わってきますのでこれは大変良かったです。オマケにサブキャラたちのSSがあったのも嬉しかったですね。

彼らは何の意図もなく登場するわけではなく、きちんと攻略対象や主人公への役割を持っています。極端なことを言えば、フクロウの敵の正体など大筋は大体どのルートも同じなのですが、キャラクター同士の関係性が練りこまれていて、それが色々なルートで徐々に見えてくるのが面白くて飽きずにプレイできました。

 

 

美しいけれど勢いがなくなってしまうように感じる独特な文体

言い回しに癖(「凝視る」や「……ッ!」など)があることで有名なライターさんですが、個人的にはそこよりも具体的にどれと指摘しにくい全体的なものが気になりました。

うまく言えませんが、なんというか「文学的」です。ありませんか?文章は綺麗で一文一文は美しいけど結局何が言いたいのか……みたいな昔の文学作品。

もちろんこの作品はきちんと展開は読み取れるのですが、主人公の心情やキャラクターとの関係を比喩表現などを用いて美しく表現したために、萌えるポイントがわかりにくくなる、劇的な変化をそれと捉えにくくなる印象を受けました。ひとつひとつきちんと読んでその都度文章の意味を考えるプレイヤーさんにはかなり評価が高いかもしれません。私はわりとさらりと読み飛ばしていくスタイルなので終わってみると輪郭の曖昧なゲームに思えました。

またおっとりお嬢様、かつ聖母系な主人公の性格もそれに拍車をかけたような。彼女は基本的に器が大きいというか若干浮世離れしているのでキャラクターの秘密(裏切りなど)が発覚しても悩みはしますがそこは深く描かれません。すぐに受け入れ、許してしまいます。このため上の公式サイトのあらすじから想定していたお話と比べると大分ドラマチックさには欠ける気がします。

 

 

 

薄い時代要素と唐突な事後描写

 この二つが個人的には最もひっかかった部分です。

なぜ仮想大正時代に設定するのか必要性がいまいちよくわかりませんでした。主人公は華族のお嬢様ですがフクロウとして働くこと(仕事だけど)異性と二人きりで行動することに、本人も周囲もそれほど抵抗を感じているような描写はありません。一部のルートで反発するキャラがいたくらいかな?

学生運動など他それらしいキーワードもおそらく乙女ゲーム部分に没頭してもらうため、控えめになっていました。

そして思いが通じ合う直後にほぼ全員暗転→事後描写が入るのはノルマかなにかなのか…。未プレイのフォロワーさんで「エロ売りなんでしょ?」とおっしゃってた方がいましたが、そうではないです。そういう描写はだいたい一人一回。※その後お誘いっぽい会話とかはあります。ただ「今やらないとだめ?」という風に周囲の状況を無視して強行するキャラが複数います。コンシューマー機でエロ要素は特に求めてない派ですが、シーン描写自体は下品にならないよう艶ぽい文章になっているので、もったいないと感じました。

あとは一番期待していた某キャラルートが他のキャラクターに食われていたのも地味に痛かったです。

 

 

まとめ

☆3.5

一定以上のクオリティだとは思いますが、前述の不満点や文章のために自分の中にあまり響くことなく終了してしまいました。

個人的に期待していた時代考証をしっかり、大正妖都、愛憎激しい…という感じではなく「大正っぽい世界で不思議な本を探しつつ、キャラクターたちの抱える悩みを主人公が癒すお話」だと思ってプレイした方が齟齬がなさそうです。

繊細な文章がお好きならお気に召すかも。