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ゲームの感想 乙女ゲ多め

【ADV】ボクとセカイのユークリッド 感想

 

2015年8月28日に発売されたノベルアドベンチャー「ボクとセカイのユークリッド」感想です。
理系的な要素が満載のゲームなのですが、カテゴライズ的には女性向け一般ということで、乙女ゲームでもBLゲームでもありません。
個人的なプレイ感を言うと、登場人物はほぼ男性ですしいわゆるブロマンス?というのかな。BLじゃないけど友人以上恋愛未満みたいに見えるシーンが多かったです。
以下はネタバレを含むゲーム全体の感想とキャラクターについての所感です。
ネタバレ大丈夫な方だけお付き合いお願いします。

 

 

 

ボクとセカイのユークリッド

ボクとセカイのユークリッド

 

 

【あらすじ】
誰も傷つかない 誰も傷つけない
生きた時間が死んだ 甘く優しいセカイ
そこに残るか、そこで消えるか。

とある地方の巨大学園都市、サガミナミ市。
街の中心にあるのは巨大な学園施設、「サガミナミ総合学園」
そのサガミナミ総合学園に通うごく普通の学生、「橘那由多」(たちばななゆた)はそれなりに真面目に、それなりに楽しく、いたって普通の学園生活を送っていた。
が、学期末……なぜか単位が足りず、このままでは留年確定という事態に。
そんな時、進級に必要な単位を極秘でもらえるというゼミのチラシを手に入れた。
「来たれ我がゼミに 掴め希望のセカイ! キミの欲しいものはここにある(単位とか(ゝω・)★)」
どこから見ても怪しいものの、背にハラは変えられぬ那由多はそのゼミを訪ねる。
そこに待ち構えていたのは、Dr.SOSと名乗る、どうしようもなく怪しい白衣の男。
「ヤバイ、マズイ、ヒドイ」と三拍子そろった変態に怯むも助手になれば単位をやると言われ、不安を山盛り抱えながらもそのゼミに通うことになった。
Dr.SOSのゼミで繰り広げられるトラブル満載の日々。
その騒がしく賑やかな日常の横で、少しずつセカイが動き始めていることなど知る由もなく……
公式サイトより

 

www.youtube.com

PVがめっちゃかっこいいので見てほしい。

 

感想

選択肢は2ヶ所、EDは4つ。フルコンプまで3時間半でした。

まとまってはいるし面白い部分もあったのだけど、ハマりきることは出来ませんでした。
めちゃくちゃ練られた世界観を土台にかなり深遠テーマを取り扱っているのだろうけど、私がそれをうまく汲み取ることができなかったのが敗因と思われます。

描写の掘り下げがあったらまた違ったのにな~という部分も多々ありました。値段が通常のPCゲーに比べるとお安めなので致し方ない部分もあるとはいえ、この設定このテーマを描ききるにはプレイ時間が短すぎた気がする。

このゲームにおいて「このセカイとは何なのか」という部分は重要だけど前提に過ぎません。

「主人公那由多はこのセカイにとどまるのか?それとも現実へ帰るのか?」という部分が肝なんだと思うのですが。

肝心の「ではなぜ主人公はそこまで現実から逃げたがるのか、何が辛くてこのセカイに来たのか」についての描写がない。
また「逃げていてはだめだ!現実へ帰還しよう」という結論にもっていく場合、どうしてそう思えるようになったかのきっかけも重要だと思われるのに、その根拠となりうる真冬先輩への友情とかドクターへの信頼とかそういうものを実感させてくれるようなシーンが少ない。
なので1プレイヤーとしては自分に引き寄せて悩むほどには感情移入できないというか、選択に重みが出ないままでした……。

前者に関しては描写を入れ忘れたというより、最初から『このゲームはあくまでこのセカイについてを描いたもので、セカイの外 (現実)については描かない』と決まっていたんじゃないかなーと勝手に考えています。

ただそれだと没入感の減少は避けられないので、やっぱり何らか別の手で補完して欲しかったですね。
現実に待たせてる人がいるなら帰った方がいいんじゃない?くらいしか私には言えない。では残ると選択されても、まあそういうのもありかもね、で終わってしまう。勿体なかったです。

 

世界観については監修などに有名な方が関わっているらしく、多分あれこれきっちり考えられた設定なのだろうけど、門外漢も門外漢な私がプレイした場合まったくその辺がわからず「なんかすごそう」で終わってしまったのは返す返すも残念でした。
Dr.SOSの長い与太話しか記憶にない。
私に知識がないのが悪いのですが、そういうプレイヤーのためにもう少し手心を……! 補足説明プリーズ。

 

他の細かい話をすると文体が若干気になりました。
三人称視点なのですが序盤はやたらと「那由多が」「那由多は」連発されてた気がする。毎文きっちり主語がついているというか。
自分のことを那由多と呼ぶ系男子なのか?と思ったけど違った。進めていったら段々その癖は控えめになっていってましたけども。
あと誤字脱字も多めでした。

 

 

橘那由多 (CV田丸篤志)

本編主人公 (?)

平凡な学生。ただしDr.SOSに出会ったことからその平穏な生活は崩れていき……。

現実を諦めた人しかいないこのセカイにおいて、唯一他人から望まれている子。ただ那由多自身は一切現実の記憶がないので、自覚はまったくない。

多少平穏主義がすぎるところはありますが思考回路は理解しやすく、そういう意味ではとっつきやすい子でした。

エディや博士に「お前は逃げている」って何度かなじられるけど、肝心の逃亡シーンについて回想がなく那由多も (プレイヤーも)そんな記憶はない。なのでやってもない二股を怒られているようで、見守っているこちらとしては若干居心地が悪かったし那由多も可哀そうだった。
1度は博士の手を取らずにこのセカイに留まることを選んだために、エディに「君は彼を信じ切れていなかったんだよ」と責められますが、正直無茶を言うなと思った。秘密主義の博士に対して、この時点の那由多は「博士は多分悪い人ではない」くらいしか情報持ってないんだよ……!

まあ確かに那由多の「説明してください!」に対してキャラがのらりくらり交わすというシーンが何度かあったために、那由多自身ももう少し察するか考えるかしてほしいと思ったのは事実だけども。

真相に気付いた後は、とにかく那由多にドクターSOSを幸せにしてあげて欲しい気持ちが強かったです。
彼らの現実は逃げたくなるくらい辛いらしいですが、なんとか兄弟で踏ん張ってほしい。
お兄ちゃんが大好きすぎてこのセカイにまで探しにきた、よくわからない知識をつけた頼もしい弟がいるんだし、ED後はいい方に向かうと信じたい。

 

 

明里真冬 (CV中澤まさとも)

那由多の学校の先輩。非常に成績優秀で優しいため人気がある。

実は紫葉がこのセカイで切り離した、自分の見たくない弱い部分。紫葉の計画に沿って那由多に近づく。

最初から那由多くんに甘々で、大変申し訳ないけどプレイ中の私は「絶対怪しい……」と警戒しまくっていました。
蓋を開けてみれば、確かに裏はあったものの人格的には那由多に見せてたものとそうギャップはなかったのかなと。

先輩は那由多と心情的な交流シーンが一番多かったので、それが影響して彼を信じるルートは感情移入しやすかったです。
特に混乱している那由多を優しく励ましてくれるところは良かった。皆意味深なことを言うか責めてくるかで、こっちもわけがわからなくて混乱していたので。

ただいつもは優しくて常識人ぽい真冬先輩なのに、紫葉先生にだけ盲目的でギャップがうすら寒かった記憶があります。那由多がゼミに参加したころとか、紫葉がいる場だけすっと影が薄くなるんだよね先輩。
だもんでてっきり紫葉先生の作ったアンドロイドとか使い魔とかそういう「息子」的な存在だと思っていたら、まさかの自分自身でぶっ飛びました。そう考えると先輩の盲目的な追従は自己愛に近いのかなあ。

しかし先輩と分離する前の現実の紫葉先生はどんな人だったんだろう? 想像もできない(笑)

関係する2つのEDではどちらも消滅してしまう真冬先輩ですが、やっぱり紫葉先生と消滅するものが彼にとってベストなのではと思います。
とにかく紫葉先生に尽くしてきた先輩ですからね、彼に受け入れられた=ハッピーEDだと受け取りました。

 

 

エディ・B・ジニアス (CV斎賀みつき)

いわゆる狂言回し的キャラ。性別不明。
神出鬼没で、セカイについて那由多にヒントを与えたり与えなかったりします。
那由多に関わるというより、セカイそのものについてのキーキャラとなりますので交流という感じではないですね。
何を考えているのかいまいち不明な人でしたが、某EDを見る限りエディも昔誰かを探していたのかなーと。探しても見つからず、もう諦めてしまったのかも?
謎が多いままのキャラでした。

 

 

ドクターSOS (CV竹内良太)

単位の対価に那由多を実験につき合わせる奇天烈な教授。何やら目的があるようだが……。

那由多くんへの強引な振る舞いが目立ったため、最初はあまり好意を持てなかったキャラ。
しかし途中の回想で「あっこれ弟か」と気づいてからは掌返ししました。なんか小さい子供が泣きながら頑張っているようにしか見えなくなった。
どうか報われてくれ~といじましい気分で見守っておりました。
ということで個人的には実は一番思い入れが強かったです。

ただ「こういうこともあったんじゃないかな~」とか「こここういう気持ちだったんじゃないかな~」みたいなほぼ妄想補完のうえでなので、本編中にもう少し仲を深めていく演出が欲しかったですねー。

この2人でいるときは基本的にドタバタ実験してるか、意味深にチクチク小言を言われるかのシーンしかないので。

博士のEDはどちらもほんのり希望があって良いのではないでしょうか。
もちろんベストは現実へ帰還するEDなのだろうけども、もう1つのEDでも那由多は諦めていませんからね。いつか博士が見つかって、どのような形でもまた2人でいるのではと妄想してます。

設定を考えると現実での外見が反映されてない可能性の方が高いので、実年齢はまだ幼いのではと勝手に予想しています。いや博士はセカイの住人ではないから彼だけはそのままの可能性も?

 

 

ドクター紫葉 (CV新垣樽助)

真冬先輩の所属するゼミの教授。何を考えているのか読めない人だが、なぜか那由多を自分のゼミに入れようとする。真冬には冷たい。

自分の弱い部分 (真冬)を切り離したものの完全な分離には至らなかったため、那由多の特性を利用して真冬を完全に消滅させようと計画します。

なんというか「明らかに間違った方法で間違った結論へ行こうとする人」という感じで、本人がこれしかないと決め込んでいるので、こちらも黙って彼が行き着くさまを見守るしかないみたいなキャラ。
今回の主人公である那由多くんとはあまり直接関わらないので、実際には今回は見守っている感は薄いのですが。

真冬のEDに関わってくるのですが、2つでがらりと方針が違うのが面白い。
1つは那由多を利用して真冬が消滅します。紫葉の当初の希望通りのはずが、彼は喪失感に呆然とする……というもの。
もう1つは那由多ではなく、紫葉が真冬と静かに消滅していくED。紫葉先生がなんだか悟りきった賢者モードになっていて、お互い結末を受け入れて消失という感じでした。
切ないけど後味はそう悪くないEDでしたが、正直もう少しそれが早ければなぁ!とも思わずにはいられません。

これらからもわかるように、真冬に関してはかなり屈折していたみたいですね。
ずっと消えて欲しいと思っていた相手だけど、その相手が自分よりも他の人間を優先するのは気に入らない……と書くとそういうのが層の人に刺さりそう*1なんですけど、上にも書いたようにその相手が自分自身って言うのが斬新。
最後まで自己完結の男だった、と考えるとほんのり虚しい気もして良い。

作品としては元は同一人物とは言え、もうほぼ別人という扱いでしたけどね。

 

 

 

 

余談ですがプレイ中は真冬先輩のロックな私服、特に上着を脱いだ立絵から目が離せませんでした。ロックバンドのボーカルみたい。

最初は紫葉との差別化のためにあえてそういう格好をしているのかと思っていましたが、よくよく考えると紫葉先生もヴィジュアルバンドの軍服コスみたいな恰好だった。

博士もアクセサリーつけまくっているし、他人の目を気にしなくてもいいセカイに来た時、案外一番個性が出やすいのは服装なのかもしれないですね。

 

 

お付き合いありがとうございました。

 

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*1:notBLですけどね