トランクルームとスレイベル

ゲームの感想 乙女ゲ多め

三国恋戦記 魁 全体感想

シリーズ最新作、三国恋戦記魁フルコンプしましたので全体を通しての感想など。

今回はネタバレアリ。

ご注意:前作と比較する内容を多く含みます。またわかりやすくするため、ほぼデフォルト名で書いています。気になる方はブラウザバックお願いします。

 

個人的にありかなしかで言えばありだし、面白いとも思ったのですが、もっとどうにか出来た部分は多そうだなあと思った魁でした。
前作や発売前プロモーションで想定していたものとのギャップを生みやすい作風なので、早めに別物と割り切れるかどうかで評価が変わりそうです。

 

 

終わってみて

フルコンプしてまず思ったのが、魁は強い制約の中で作られたのではないかということです。
例えば「前作とはまったく違う、あるいは正反対の物語にする」とか「全編メリーバッドエンド風味にする」とか「原作要素を多目に取り入れる」とかですね。
コンセプトがしっかりしていること自体は素晴らしいことだと思うのですが、あまりにきつく縛りすぎたために損なわれてしまった面白さというものもあるのではないかと思いました。
あくまで推測ですけどね(^o^;)

 

 

ストーリーについて

前作を歴史上の勝者や主人公(花ちゃん)による表の物語だとすれば、今作は歴史上の敗者や名もなき少女(巴ちゃん)による裏の物語です。
その違いをどう描いてくれるかなという感じだったのですが、恐らく前作プレイヤーが一番驚いたのは「歴史改変*1がほとんどない」というところではないでしょうか。
巴ちゃんは最後まで本の使い方を完全に理解することはないです。偶然発動させてしまうとか、自動的に増えた記述を参考にするくらいにとどまります。
そして魁は敗者たちの物語。それを改変しないということで、自然と話は全編バッドルート染みてきます。
このあたりのシビアっぷり自体は個人的には好きなんですけどもね。異世界&歴史トリップ物は難易度ハードの厳しいくらいが好みです。実際問題、現代のJKがこの時代にいきなり放り込まれて何ができるのかというところはありますし。
花ちゃんのように歴史を変えて万事うまくいったケースもあれば、勿論ほぼ歴史を見ていただけの子もいて、そのひとりが巴ちゃんということかと思います 。
どちらかというと前作がかなり優遇されていたというか、優しさフィルターがかかっていた気さえします。

 

けどもまあそれはそれとして、『プレイヤーは歴史改変が出来ることを知っているのに、操作キャラクターが行動してくれない』状況は一種のストレスになりえます。
私も主人公が本を取り出すたびに「駒!出して!振って!!」と肩に力が入っていました(;'∀')
初周を終える頃には「あっこれ多分ずっと本使わないわ」と悟りましたけども。
ここまできっちり全部のルートで改変縛りしなくても良かったと思うんですけどねー……。ノーマルルートでもなんでも一つくらい好き放題やるルートみたいなのがあっても良かった気がしますが。

 

 

主人公について

主人公である巴ちゃんのキャラクターも私が当初想定していたものとはズレがありました。
弓道の実力者ということで、てっきり戦う主人公が無双しまくって悪役救済!系のシナリオになるのかと。
蓋を開けると傾国の美姫ポジションでびっくり。体験版仲穎ルートで貂蝉と呼ばれた時に「ん??」と思ったけど。

また彼女は良くも悪くも順応性が高いというか流されやすいというか。攻略対象によって性格が微妙に変わるので、それも新鮮でした。
これは最初の適性チャートで花ちゃんは何を選んでも「孔明」なんですが、巴ちゃんはルートによって対象が変わることからもわかります。
巴ちゃんも現代の女子高生としては頑張った方だと思うのですが、花ちゃんが「ごく普通」で巴ちゃんが「しっかりもの」という紹介なのはやっぱりちょーっと違和感がありました。
あと「色恋沙汰に疎い」ともありましたが初恋がまだだったというだけで、花ちゃんより「女」の部分が強かったように思いました。
彼女に一貫していたのは「恋のためにすべてを捨てられる」という性質の方ですね。「私だけは恋しいあなたの味方でいる」女性と言ってもいいかもしれない。
そのために攻略対象の抱える諸問題を見ない振りする場面もあって、そこは好き嫌い分かれそうだと思いました。私は好きです。というかこんな子がいてもいいと思ってます。

 

はい。こういうの……嫌いじゃないんですよ、私!!!
歴史上の敗者をフィーチャーしているだけに、ストーリーが進むと、段々攻略対象の周りからは人がいなくなっていくのです。
ついには心の支えが主人公だけになった攻略対象。そんな彼を見捨てられず、かといって彼のためにすべてを変えようという気概はない。黙って寄り添い、影のように一緒にいようとするだけ。そして二人で静かに破滅へ沈む……というメリバっぽいゲーム(※一部例外有り)です。というかメリバ風味にしたいがために縛りを設けた印象さえ持った。

メリバ好きな人なら好きだと思う、んだけどどうなんだろう。
エンディングはハッピーエンドであっても「表舞台から消える代わりに命は助かるし、当初の運命からすればそれで上々でしょ」系のものがほとんど。 

つまり攻略対象が歴史から姿を消すことに変わりはないんですよね。死亡回避&運命の恋人が出来るだけ。

初回は「えっこれで終わり?」と思ったけど、悲惨な結末を見続けているとこのハッピーでも段々幸せだと思えてきたくらいです。バッドを回収できるだけ回収してからハッピーエンドに行ったからかもしれないですね。

命があるだけ儲けものだ……。 

※ヒントモードがあるうえに完全個別制なので、今回は狙ったEDを見るのが簡単です。
ただED後のアフターストーリーは全員分欲しかったですね。幸せな余生()を見ないと安心できないキャラ多すぎます。

 

蛇足

余談ですけど、前作がトントン拍子にうまくいったのは(時勢もあるだろうけど)やっぱり師匠の力が大きいなと思いました。
前作、師匠は花ちゃんにまず軍師という立場を与えているんですよね。これによって彼女は攻略対象に依存せず、単独で公的に発言ができます。
魁はそういう事前の仕込みも後ろ盾もないです。よって攻略対象の私的な知人=愛妾とか言われてしまう。
「こうすればいいのでは」という策があっても、それを発表できる地位にないので、基本何もできないんですよね。
せいぜいが攻略対象に話を聞いてもらうくらい。
だもんで実際にその提案を飲むかは結局、攻略対象の決定にゆだねられてしまうという。
この辺の違いとかは興味深かったです。

 

 

総合して

短めだけどお腹いっぱい*2という感じでしたが、ぶっちゃけボリューム厨としてはもう少し人数欲しかったです。
隠しもいなかったですし。

あと上で「前作とは別物と割り切った方がいい」みたいなことを書いといてなんですが、私の場合前作と比較して相違点を「興味深い=面白い」と感じた部分も大きかったので、単品で乙女ゲームとしてどうかと言われるとちょっと物足りなくはありました。
実際魁単品で考えたとき、主人公が本を持っている意味が薄い(=三国恋戦記シリーズである意味は?)と言われると一理あると思いますし。
作風は好きなのですが個人的なツボ(萌え)は少なくなってましたしね。残念。
一番最初に書きましたが、なんか制約で雁字搦めのなか作ったような印象があるんですよね。商業作品なんてそんなものでしょと言われるとそれも仰る通りですが。
「こういう流れが好き、絶対萌えるから作る」じゃなくて、「こういう流れにすると決まったから、なんとかキャラパターン分ひねりだした」感があるというか。ここまで思い切った作風転換をするならもっと好き放題やってくれても良かった、とか推測にすぎないのに思ってみたり。

 

総合して「私は好き、でもオススメはしにくい」 ですね。

 

 

 

何やら前作の方の学園パロディが出るようですが、魁もFDお待ちしてますよ……!
ハッピーED後のアフターストーリーも気になりますが、バッドEDや巴ちゃんが無双したりのifルートも見てみたいです。
次回は自分がプレイした順に、数行でキャラクター感想などをまとめようと思っています。

でもニルアドクロユリ終わる前にハイリゲンシュタットが来そう…どうしよう…!もしかしたら魁の後はハイリゲンシュタット(長い)になるかもしれません(;´∀`)
お付き合いありがとうございました。

 

にほんブログ村 ゲームブログ 乙女ゲー(ノンアダルト)へ
にほんブログ村

*1:歴史改変=空白を好きな展開で埋めるくらいの意味で使ってます

*2:鬱度高い作品は長々やられるとさすがに疲弊するので