トランクルームとスレイベル

ゲームの感想 乙女ゲ多め

フェアリーテイル・レクイエム 感想

※男性向けR-18作品です。
ライアーソフトさんのフェアリーテイル・レクイエムクリアしました。
このメーカーさんのゲームはPSP紫影のソナーニルをクリアしたのみだったのですが、この間までDL版がセールしてて一目見てすごく気になって。
結局特典目当てで、フェアリーテイル・アンコール(FD)とのツインパックパケ版の方を買っちゃったんですけどね(;'∀')
もたもた感想書いてる間に、つい先日FDと特典の追加シナリオもDL版が出たようです。もうちょい待てばよかった。

バラでも買えるようなので購入予定の方はDL版という選択肢も増えましたよ!
現在リリース記念セール中です。
以下ネタバレありなのでご注意意ください。

 

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舞台は、「お伽話症候群(フェアリーテイル・シンドローム)」の治療に特化した隔離病棟。通称「楽園」。
フェアリーテイル・シンドローム」とは自らを童話の登場人物だと思い込む人格障害の一種であり、入院患者たちは一様に「聖書」である童話絵本を抱え、その教えに従って生活している。
主人公はそんな童話少女たちの楽園に、不意に紛れ込んでしまった記憶喪失の少年。何故この場所にいるのか、自分はどんな人物で何を成すべきだったのか、大事なことほどわからない。かりそめの役割を得ている少女たちがうらやましく思えるほどに、寄る辺ない。
そんな折、彼の部屋で発見したスケッチブックには、乱れた筆跡でこんなことが書かれていた。
──少女たちの中にひとり、つみびとがいる。
公式サイトより。
 
己を物語の主人公だと思い込む少女たちと記憶のない少年。彼らが本当の自分を見つけ出すお話です。
私は大変面白かったのですが、色々な理由で人には勧めにくいなとも思いました。
 
まず設定が胸糞。
要は「楽園」は心を病んでいる患者に、治療と称して実験や性的虐待を行っている施設なんです。
なので女の子がモブに無理強いされているシーンが(主人公とのそういうシーンの前に)複数回入る。
もうこの時点で「無理!!!」って方も多いかも。
それからファンタジー路線で決着がついてしまうこと。
ファンタジーなお話だと思ってたらきちんと理屈がついた現実的な話だった…というのも人によって評価がわかれそう(私は結構好き)なんですけど、その逆はもっと否定的な意見が増えそうなイメージなので。
 
私はというと、どういう物語なのか早いうちにわかっていれば割り切ってプレイも可能なタイプなのでなんとか。
上記二つの要素とも、序盤や各ヒロインルートでチラ見せがあったんですよね。
なので「あっ(察し)」と早々に覚悟を決めておくことができました。
 
不思議なことに、振り返ってみると割と明るかったりさわやかなシーンの方が私の印象に残ってます。
女の子たちが、お茶会したり、兄を探したりと妄想であっても物語の世界の中で幸せそうに過ごしているからかも。
※だからこそ余計に胸糞という意見もわかる。
ただ舞台設定はアレですけど、基本メインは主人公である少年との交流なんですよね。
最初は奇妙な言動に戸惑い、段々とそれに慣れて行動原理を把握するようになり、最終的になぜお伽噺症候群を発症したのかというその子の根幹にかかわる部分にまで触れられるようになる…というお手本のような「親しくなっていく過程」が見れます。
薄皮一枚隔てた先の残酷な現実は消えないんだけど、彼らの交流が真摯なものであることに変わりはないので、うまーくプレイヤー(私)の目をそらして交流に集中させてくれました。
 
驚いたのは各ヒロインルートでは妄想に浸らせるような選択肢が正解であるということ。
先にバッドエンド回収しようとしてびっくりしました。
ある程度予想はつきますしゲームを進めていけば回想も入るのですが、少女たちはそれぞれ辛いことがあって心を壊さないための防衛行為として妄想に逃げ込んでいます。
彼女らの背景も知らないまま強引に夢から覚めさせるようなことをすると、直視した現実に耐えられなくなってしまう、と理解すれば納得できる流れです。
攻略するなら個人的にはアリス→オデット&オディール→ラプンツェル→グレーテル→ゲルダの順番がおススメ。
 
あとこれだけ語っておきたいんですがこのゲーム、ビジュアルがすごいです。これで購入決めたところもあるくらい。

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これ一枚絵とかじゃない、プレイ中のスクショなんですけど素晴らしい。
語彙足りないので(ry劇団イヌカレーめいて、色んなタッチのパーツがコラージュのように張り付けられている背景がたまらないです…!
ヒロインごとにモチーフになる物語にちなんだ装飾が部屋に施されていて、背景もそれに合わせてちゃんと人数分用意されているのでじっくり眺めているだけで楽しかったです。
それにあわせてキャラデザも不思議なタッチなのもよかった。
 
以下はさらにネタバレ度マシマシなキャラクター感想。
 
 

アリス (CV萌花ちょこ)

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※今回ツイッターアイコンをお借りしてます。

圧倒的ヒロイン力。
お手本にした「聖書」が不思議の国のアリスなので、他の女の子と比べても話が通じません。
そんな宇宙人な彼女と恋に落ちることはあるのか?と疑問だったのですが。
正確な意思の疎通はできないながらも、主人公が記憶を失って困っていると知ると彼女なりに一生懸命彼を慰めようとするんですね。どうやれば記憶を取り戻せるか数式にしてみたり、彼の殺風景な部屋を飾り付けようとしたり。
優しい子だなーとこの時点で一気に評価が跳ね上がっていました。
さらにラプンツェルに恋と愛の違いについて尋ねるシーンで「恋は落ちるもので愛は溺れる・浸るもの」と言われ、アリスは即座に

恋はきっと落ちた先のことよりも、落ちている瞬間が大事で、
愛はたぶん落ちた後が重要、それもどうやら
落ちる先は不自由な水の中らしい。
と思うのです。
すごくない? 普通こんな言葉さっと出てくるか??? 素敵すぎるだろ…と私が落ちました。ちょろい。
個別エンドでは、自分たちだけが物語に逃げ込むのではなく、楽園の大人も物語に巻き込んでます。それができたのは彼女だけ。
またその他のルート、特にレクイエム(=真相)ルートでは彼女の一言が流れを変えることが何度かあって、そういう意味でもヒロイン力高めでした。
※アリスの場合ヒロインというのは攻略対象というより女性主人公っていう意味で使ってます。
 
 

グレーテル (CV草柳順子)

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守られ妹系だと思っていたら要所要所で芯の強いところが見れて好きでした。
気持悪いモブにつきまとわれて、より施設周辺の嫌悪感を煽るようなつくりになってましたね。
このモブ関係で施設がどういうところか推測できるほど情報が出るのでプレイは後の方がいいんじゃないかな、と。
兄(と認定した主人公)と関係を持ってしまった以上ヘンゼルとグレーテルではいられなくなる、という理屈になぜかすごく感心させられて、どうなるのか興味深く見守ってたら別の兄妹の作品に逃げ込んだのにはなるほどなあという感じでした。
結局疑似とはいえ兄と妹という関係性がお互いにとってメインだったのだろうなと解釈しました。
主人公もかなり後半まで妹に存在を重ねてまったく意識していなかったようだし、傍観者(私)からすると恋愛感情という感じには見えなかったので。グレーテルに関してもお兄さんぽい異性への憧れの延長ぽかったですしね。
薬さえなければ一線は超えなかった気がします。
勘違いの恋だったのかこの二人の感情を突き詰めると恋に至るのかはこのルートの二人にしかわからない…かも。
こういうふわっとした結論嫌いじゃないです。
 
 

ラプンツェル (CV水純なな歩)

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共通ルートがインパクトありまくりで若干気乗りしなかったのですが、良かったです。
王子様認定したなら誰でも恋をする…という時点で大丈夫かなと思ってましたが、グレーテルが男に連れ出されて錯乱するシーンで、単純に快楽に逃げてたわけではなく、おそらく施設の実態を知ってて自分の身を捧げることで無意識に他の女の子への被害を減らそうとしていたのではないかと思い至って評価が激変しました。
また主人公との恋愛は何か別の感情や関係の代替では、と思わせる女の子が複数いる中で、彼女はかなりストレートに主人公に恋をしていたように見えたのも個人的高評価ポイントでした。
王子様でもおばあさんでもない「主人公」を認識していたり、彼女はお伽噺症候群の幻想に負けず少年本人を見ていたように感じたからかもしれません。
おっとりした守られタイプの女性に見えて、時折母を思わせる強さがあったのも良かったです。
プレイしているうちにすごく応援したくなったので最後のエンドはそういう意味でちょっと複雑でした。
……でもこれだけ言わせて!個別入ると文章が変わってなんだか読みにくくなったと感じたのは私だけでしょうか???
読点で区切られまくってるけど一文がすごく長くてウィンドウに句点が一つしかないとか結構あったんですが…。
バッドエンドのスタッフロールではライターさんは一名しかお名前がなかったのですが複数ライターさんだったのかな。謎。
 
 

オデット&オディール (CVかわしまりの)

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ちょっと特殊なルート。

というかこのルートは徹頭徹尾双子の間のお話であって、主人公はあくまできっかけをもたらすくらいの存在ぽかったです。二人の間に割りこめない。
ふわふわしたオデットよりも、オディールの方が強烈に印象に残ってます。
彼女は彼女でエゴ全開で動いているので偽悪的というとちょっと違うんでしょうけど、それでも身体を張った痛々しい姉への献身はある種の美しさがありました。そりゃぽっと出の王子様なんか太刀打ちできない。
オディールの行動原理があまりに一貫しすぎていたために、過去に違和感を覚えてあっさりつみびとがわかる構成になっているのは皮肉というかなんというか。
最後までお伽噺症候群にかからないオディールに対して、主人公の方が物語に飲み込まれていくのは面白かったです。
あとレクイエムルートでオディールの姉妹愛(?)は一方通行でないことがわかって幸いです…仲良くしてて本当に。
 
 

ゲルダ (CV赤司弓妃)

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アリスが女性主人公なら、攻略対象という意味で正ヒロインポジションにいる彼女。
といってもルート入って当初のゲルダは「記憶がない」「施設に懐疑的」と主人公と似た状況にあるので、もう一人の主人公という感じであまりヒロインぽくないなと思ってました。
だけど匂わせてくる感じからして、どうも特別枠らしいのはずるいなー…というのが正直な感想でした。
ただレクイエムルートまでプレイすると、歪な家族関係に悩んでいた主人公の支えであったり、彼を追って施設に来たり、バッドエンドでは彼に最期まで付き合うことにしたりとオディールに負けない献身ぶり。良妻感がすごくて最終的に「これはかてない」となりました。ラストのあれもまあ、この子ですよね。
とにかくハッピーエンドが用意されているゲームで良かった。お幸せに!
余談ですが「雪の女王で記憶喪失になった時のゲルダ」だったらどうしようと序盤思ってました。ただの杞憂だった。
 
 

主人公 (CVなし)

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記憶喪失の少年。
お伽噺症候群の少女たちを一歩引いて眺めているという構図のためか、傍観者めいた言動があってプレイヤーとも親和性が高いと思われます。すっと物語に集中できました。
というか個人的にオッと思わされたのが、共通ルートでラプンツェルが王子とアレしてるシーンでのリアクション。
自分も病気なので幻覚かもしれないし、ここではよくあることかもしれない。なによりラプンツェルは知り合ったばかりでどういう人なのかもわからない…と嫌な予感はするのに見なかったことにしちゃうんですよね。
彼のこの行動、私はひどいというより自然だと感じました。
他にも「自分が犠牲になることに間違った陶酔感を得ていた」と独白するなど、対象年齢高めの作品はこういういい子すぎないキャラが主人公になれていいですね。
なんということはないシーンなんですが、私はここでゲーム全体への関心を惹かれ、以降は気持ち前のめりでプレイできました。
こういう作品のスタンスが分かるシーンって大事。
どの物語の主人公でもない白紙の少年は、それを利用して少女たちの物語に介入するのですが、レクイエムルートで明かされる彼の過去も彼女らに負けず劣らず悲惨。
救いなのは彼が守ってきた妹と、彼の支えだったゲルダは変わらず味方だったということかな。
仮想現実だった各ヒロインルートののち、現実で施設職員の洗脳により自分を見失う少年に、少女たちが「あなたはこんな人」とお返しする図はとても好きです。
一方的に救うのではなく、少年の行いが何かを変えて、それで連鎖的にいい風に向かっていく…という構図が爽やかでいい。
とがびとを指摘できない場合のピーターパンルートも、いわゆるバッドエンドルートなんですがしっかり作りこまれててよかったです。
ピーターパンは双子のお兄さんを主人公が模したもの、なのでそう考えると一言では言い表せないくらい複雑なエンドです。
少年には兄への兄弟としての情もあっただろうし、かつてはああなりたいと羨んだこともあったかもしれない、でも結局彼に重荷を押し付けて施設にぶち込んだ張本人ですから。
ピーターパンになりきってしまった少年は自分ではそれに気づけない。正しく把握しているゲルダだけが、消えてしまった少年のことを想って涙するという。
虚しくてこれはこれで心に残るエンドで素敵でした。
 
 
 
全然まとまらなかった…。
FDもそのうちプレイする予定です、が、どうも彼のお話はこれで終わりっぽいですね。
ちょっとさみしい。
お付き合いありがとうございました。

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