トランクルームとスレイベル

ゲームの感想 乙女ゲ多め

夏空のモノローグ 初回プレイ&カガハルルート感想

プレイは是非夏に!根強いファンのいる夏空のモノローグをプレイ中です!
色々調べてみましたが、おすすめ攻略順は人によって違うようなので部長と木野瀬は後の方がよいという意見以外は好きにプレイすることにしました。
カガハル→篠原→先生→部長→木野瀬→綿森、の予定です。でも部長さんのキャラが好きすぎてちょっと迷ってます。

続きからネタバレありの初回プレイとカガハル√感想になります。

 あらすじ

30年前に超高層建築物「ツリー」が突如現れたこと以外何の変哲もない田舎町、土岐島市。主人公(デフォ名小川葵)はそこで廃部が決定している科学部に所属しています。一年前に記憶を失っている彼女にとって科学部は心の支えだったため、複雑な気持ちで廃部前日の29日に最後の活動ともいうべきツリー観測に赴きます。そこでツリーが不思議な音をだし(作中では歌うという表現)、さらには謎の発光現象。みんな驚いたもののそれ以上のことは起きなかったため、その日はそれで解散します。しかし次の日主人公が目覚めると、彼女と科学部以外の人間は再び29日を繰り返していました。科学部は最後の活動を終わらないループの解消に決定しますが…。

 

初回プレイ感想

ループというすごい現象の割に、物語自体ははっきり言って割と地味です。世界を救うわけでもないし、誰かの運命を劇的に変えるわけでもない。まだ二人しかクリアできていないのでもしかしたらそういうルートもあるのかもですが。でもそれがいい。
なんというかとてもノスタルジックなゲームです。例えば放課後の部室の背景に描きこまれている差し込む夕日とか、みんなではしゃいだ後少ししんみりするシーンを入れてくるところとか。とはいっても全編しんみりではなく、共通ルートはむしろ明るいんですよ。主人公に限らず科学部のメンバーたちは廃部にそれぞれ思うところがあるので、ループを歓迎している節があります。今日で終わりだと思ったらボーナス期間があった!みたいな。ループの解消を目的としているものの、中盤まではループにかこつけて(一応理由はついてますが)肝試しとか花火とか全力で夏らしい遊びをして過ごしています。LRCといって、科学部がループの研究のために何をしたかエピソードを選んで読んでいくシステムがあるのですが、ここはどれも思わず笑っちゃうくらい楽しそうでよかったです。彼らが仲良く騒いでいるのがとても好き。すごくきらきらしてます。だからこそ個別ルートに入ってから、「終わり」を意識してからの切ない要素がより効いてきます。
学生の夏は楽しく、短く、特別だけどいつか終わるもの。だから大事にしてね。そういう作り手のメッセージを強く感じます。子供の頃、夏が終わるたびになんだかものすごくさびしい気分になっていましたが、それを思い出させます。
システムに関しては昨今珍しいビジュアルノベル形式です。画面全体に文章が出る。ビジュアルノベルそれ自体には好きも嫌いもないのですが、背後の立ち絵が変わるたびに一瞬字幕が消えるため進行はさくさく、とはいかないのが少し気になりました。実感できるほどここはこの形式じゃなければ!というものもなかったですし。
なんか感傷的になったな。恥ずかしい。
以下はカガハル√感想です。
今回感想書いてる間に二回ほどデータが消えたり、あちこち順番いじったりしていつも以上にとっちらかってます。ご注意を。

 

 

 

 

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加賀陽(CV高橋直純)

隙あらば軽い調子で主人公へ愛の告白をしてくる後輩。通称カガハル。
何度目かのループでたまたま訪れた旧校舎の美術準備室で、主人公は直前まで誰かが描いていたと思しき描きかけの絵を見つけます。綺麗な女の人が描かれたそれの作者が気になる主人公ですが、なぜか作者は次のループで美術準備室を訪れませんでした。科学部以外にもループに気づいている人間がいるのでは、と主人公は一人調査を始めます。もちろん、というのもおかしいですが犯人はカガハル。正体が判明した後は主人公も美術準備室に通うようになり、カガハルの普段とは違う、真剣に絵画に向き合う顔を知ることになります。それをきっかけにカガハルを意識するようになって…というルート。

カガハル、かなりしっかりしてる子だと思いました。
主人公は基本的にループがずっとこのまま続けばいい、みんなと楽しい日々のまま立ち止まっていたい、というスタンスです。それをカガハルが優しく大丈夫、先輩の未来は素晴らしいですから心配しないで、と背中を押すようなかたち。

カガハル自身も5年間の海外留学を間近に控えるなど、実は充分ループ継続派へまわりそうな理由を持っているにも関わらず。

そこでそれでも明日へ進まなくては、と言えるのが彼の魅力です。
恋愛面でも、軽い愛の言葉を連発する理由、あれほど好きだと言ってた主人公からの告白を流す理由を知り、自分のことで割合いっぱいいっぱいな主人公よりも相手のことも考えているカガハルの方が精神的には大人なのではないかなと思いました。

彼が一度挫折を味わっていること、主人公が直近一年の記憶しかないこともあって仕方がないことなのかもしれませんが。

 

挫折と書きましたがカガハルは元々絵画に関しては努力の末、専門家に評価されるようになるほどの腕前を持っていました。しかし中学二年生の頃事故にあい利き手である右手を怪我し、細かい作業ができなくなってしまいます。なんとか左手で絵を描けないか模索するも満足のいく出来にはならず、ある日もう筆を置こうと、最後にこれまでの絵を公園に持ち込み燃やそうとします。

そこにまだ記憶を失う前の主人公が通りがかり、カガハルの最後のスケッチを「これが一番絵が描きたいという気持ちが伝わってきて、綺麗」と評価します。そのことで元はと言えば自分に関心のない両親の気を引くためだけに始めた絵だったけれど、続けていたのは描くことが好きだったからだということに気づくカガハル。また描いたら見せる、という約束をした主人公に恋をした彼は、そのあと絵を描くことを続け再評価され、主人公の制服から高校の見当をつけて追って入学。美術準備室で描いていたのはその時の主人公でした。
つまり彼の告白を主人公はずっと冗談で、誰にでも言っているものと解釈していますが(プレイヤーさんは察していたでしょうが)すべて本気です。冗談っぽいノリにしてしまうのも、途中カガハルへの恋を自覚した彼女からの告白を冗談として流してしまうのも、ちらっと上に出てますが実はもうすぐ絵画勉強をしに5年間海外留学をすることが決まっているからです。好意は伝えたいけど、その先がない自分と両思いになっても辛いだけでどうしようもない。冗談のように告げていればこの想いも本当に冗談になってくれるかもしれない。

告白を断ったのも彼女への思いやりからで、普段の軽い告白もカガハルなりの葛藤の結果だと思うとなんだか切なく見えます。
また彼はことあるごとに主人公を「素晴らしい」と褒め称えますが、何の根拠もないわけではなく、上記の過去により本気でそう思っています。なので「このままでいたい、ループを終わらせたくない」というスタンスの彼女を同じ言葉で励まします。曰く「大丈夫。先輩は素晴らしい人だから、そんな人に来る明日が幸せでないはずはない」。

当初、主人公はその褒め言葉はカガハルの方にこそ相応しいと思っているので、中々素直に受け入れられません。また彼から過去の思い出について語られた後も、「それは記憶を失う前の少女であって私ではない」と反発します。そんな彼女にカガハルは「あなたはあなたです」と言います。これまでの流れでカガハルが言うと妙に説得力が。

言葉だけでなく、彼は最後のループの日に例の絵を完成させて主人公へプレゼントします。描かれた笑顔で、彼女の世界が幸せなものであることが伝わってくる絵です。それを見て主人公は「こんな笑顔の持ち主の延長線上に自分がいるのは素敵なこと」だと感じ、以前の自分への否定的な感情を和らげ、明日への期待を持てるようになります。

主人公は主人公で記憶喪失当時の母親からの一言で一年前の自分≠今の自分というイメージが強く焼き付いていたようだったので、そこを優しくリンクさせて太鼓判を押してもらえたことでだいぶ気は楽になったんじゃないでしょうか。
留学の件に関しては主人公の方からカガハルに待っていてもいいかと尋ねます。1年の記憶しかない自分にも15年しか生きていないカガハルにも5年は大きいけど、二人ならきっと大丈夫、と。心の底では望んでいたけど、主人公のことを考えるととても言い出せなかっただろうカガハルは、それを聞いて泣いてしまいます。

そしてツリーの出す波長に規則性を見つけた部長の手によって、ついにループ最後の日を迎える、という感じです。カガハル報われてよかったね…。
全体を見るとやはりカガハルが精神的に主人公を引っ張るというか、導いている感が強いルートだったと思います。自分たちではどうにもならないタイムリミットというものはあって、本来は主人公がカガハルのことを深く知る前に彼は海外へ行っていたのでしょうが、まさしく誰かのくれたボーナスタイム・延長戦みたいに彼との絆を作ることができた。そんなルートでした。

 

ループに関してはまだよくわかりません。例のツリーの波長が30年前と1年前、そしてループ開始の29日に観測されている、というのが気になります。主人公の記憶喪失とも関係があるのかな。
そして綿森さんすごい存在感。意味深なことを言いまくってどう見ても関係者なのに、スルーする主人公もすごい。

次は同じく後輩の篠原の感想です!ここまでお疲れ様でした。