トランクルームとスレイベル

ゲームの感想 乙女ゲ多め

【総評】大正×対称アリスシリーズ

百合花様無双ゲー。

 時間のかかるゲームばっかりつまみ食いしていたので、直近コンプしたのは同人乙女ゲームという有様…。さすがに初っ端からそれはどうかと思ったので、まずこちらをシリーズ通して総評など。

なるべくネタバレ避けてます。

これは王子様を救うおとぎ話

                         公式サイトより

PCソフト4枚を一年かけて順次発売していき、昨年末に完結したシリーズです。

攻略対象はep1~3は2人ずつ、エピローグ1人の計7人。

共通ルートはないに等しく、ルートごとにキャラクターとの関係性が微妙に違うパラレルワールド形式です。

 個性の強すぎる主人公、人によっては鬱要素ともなりうる攻略キャラの重い過去、こちらの感情が処理できなくなるどんでん返し……とかなりの異色(意欲)作でした。

個人的にはこういう人を選ぶ攻めの姿勢のゲームは応援したくなりますし、楽しくプレイしました。ただ異色作というのは萌えるのが難しいから避けられてきたという側面もあり。お話の面白さの代償として萌えが少なかったのは確かです。

 

 

 

メルヘンな外見に反したシビアな要素

きらきらふわふわのビジュアル、童話のヒロインと同じ名前の攻略対象たち……と一見王道乙女ゲームに見えますが、攻略対象たちの抱える事情は大変現代的というか生々しいものです。まるでアメコミヒーローがサービス残業に悩むようなちぐはぐさ。間違っても「身分違いの恋」など、悲劇的ですがある意味美しいものではありません。

それを主人公、有栖百合花(デフォルト名、名前のみ変換可)嬢が割と力技で解決していく、まさしくカウンセリングゲームです。

 

主人公が色々な意味で強すぎる

カウンセリングといってもただお話を聞くだけではありません。

『大正×対称アリス』応援中!  

バナー貼っちゃう。可愛いね!

この百合花嬢、可愛らしい見た目・ルー大柴のような話し方・才媛と名高い頭脳・高いテンション、などと属性持ちまくりの不思議系(しかし天然ではない)お嬢様。

攻略キャラを時に翻弄し、時に出し抜き、それでも一途に相手を想って完膚なきまでのハッピーエンドを目指すのです。

一途系小悪魔は最強!なのですが、そこが彼女の強みでもあり危うい部分でもあります。

 ただ自己投影派も一定数いるジャンルなので、彼女は好き嫌いわかれるでしょうね。

 

色々とひっくり返るエピソード3

どのディスクも一番はじめに、真っ暗闇の中で主人公と謎の少年アリスが出会って会話するシーンから入るのですが、ep1、2では特にそれについて触れられることはありません。他にも若干ひっかかるものの気にするほどでもない違和感がそこかしこにありますが、それについても説明はなし。

(余談ですがこのアリスもクセが強く、体験版のこのシーンで購入を躊躇った方もいるのではないでしょうか。こういうノリは本編ではごく一部の明るいおふざけシーンのみですのでご安心を。体験版は最後までプレイしてから購入検討されるのをおすすめします)

それらの伏線をまとめて回収してくれるというか真相が明らかになるのが、唯一攻略制限のあるep3です。他ジャンルのADVをプレイされている方はもしかしたらep1の時点で気づいてしまうかもしれませんが。ここで「そ、そうだったのかー!あ、そういえばあれはこういうことか!」とパズルがハマるとすごく気持ちいいです。私はちょっと前にたまたま同じようなカラクリの別ゲーをプレイしていたので、そういう意味では100パーセント驚くことができず。非常に残念でした……。

エピローグは本当にエピローグ。明らかになった真相を踏まえて、キャラクターたちはどう決着をつけるのかという後始末のおはなし。

真相に驚けるか納得できるかでシリーズ全体の評価が変わってくるような気がします。

 

萌は犠牲になったのだ……

 前述したとおり、そしてキャッチコピー通り、百合花嬢が王子様を救う今作では、そのせいで攻略対象のかっこいい見せ場がほとんどありません。

※きちんと恋愛イベントはありますよ!ただ肝心な時に弱っているのが攻略対象、バシっと決めてくれるのは百合花さんの方なんです……。

また判明した真相によって素直に萌えられなくなるプレイヤーも皆無ではないと思います。私もぐるぐる考えすぎてそうなりました。

 ただエピローグまでプレイすると非常にきれいな終わり方をしていますので、3まで遊ばれた方は毒を食らわばなんとやら、最後まで走り抜けるのをオススメします。

 

移植について、ちょっと愚痴

※ただの愚痴なので読み飛ばしても全然大丈夫です。

こちらの作品、ご存知の方もいらっしゃるでしょうがすでにVitaに移植が決まっています。

某メーカーのPC乙女ゲームが約9ヶ月後にVita移植されたときも「えっ!?」と思いましたが、今回はエピローグ発売からVita版発売まで6ヶ月です。早すぎる。だんだん移植までのスパンが短くなっていませんか?

それでも通常移植ならスルーしたと思うのですが、今回はPC4枚分をひとつにまとめての移植なんですよね……。約12000円したのが7000円でプレイできます。新規の方にはお得ですね。

結局お金かよ!とかこれで乙女ゲームが盛り上がるならそれでもいいじゃないか、とか自分でも思うのですが、心が狭いのでやはりモヤっとする気持ちを抑えられず。

新設ブランド、人を選ぶ作品にも関わらずシリーズを追っかけてきたプレイヤーに対して不誠実じゃないかな?と首をかしげたくなります。PC乙女ゲームはやるけどVitaは持っていない、という層が果たしてどれだけいるのか……。

というか私個人は若干次回作(があれば)、様子見したくなりました。どうせすぐ移植するのでは、と思ってしまうので。

企業がより高い利益を求めるのは当然なので、機会があればバンバン売るのは正しいというのもわかっていますけどね。ハイ愚痴終わりー。

 

 まとめ

☆は四つで!

萌が少ないとか文句を垂れましたが、それでも文句なしに面白かったです!

なによりep3の真相が徐々に明るみになっていく感じが答え合わせのようで、得られるカタルシスが相当なものでした。一つ一つは小さいことながら丁寧に貼られた伏線も好みです。

ブランド創設初作品でしたが、さすがのライターさんでしたね。

あと何度も言いますがこういう挑戦的なゲームは好き。今回は残念ながら萌え転がるということはありませんでしたが、テンプレートにはまりすぎてジャンルが停滞、衰退しないようこういうメーカーさんも必要だと思うんですよ……。

どんなゲームでも大丈夫!一風変わった乙女ゲームがやりたい!そんな貴方にオススメです。

OPのCDかサントラ発売をお待ちしてます。